大雪の夜と『Jazz:The New Chapter』の巻

別館、楽しいです

サツ「はい、第57回です」

バツ「いやー、もう3月です」

サツ「今年になってから、完全にブログが1月に1回更新ペースになってるじゃん」

バツ「まずいですねー、これ。いや、殺伐ジャーナル別館はわりとカジュアルに更新しているんですけどね」

サツ「あっちの方が短くて済むもんね」

バツ「それもありますし、レイアウトが綺麗だから、更新していて楽しいんですよね。それに何と言っても、こちらの本館と違って、別館の方はアクセス解析が付いてないから、アクセス数を気にしなくていいというのが大きいです」

サツ「何だよ、その理由・・・」

バツ「結構な熱量で書いてもアクセス数6とかだとモチベーションが・・・」

サツ「切なすぎるね。それなのに、今回、久々に更新する理由は何なの?」

野菜健一とナギーラに捧ぐ

バツ「Twitterでやりとりしている野菜健一ナギーラというチンピラにブログを更新しろと脅されていまして、更新することになりました。特にナギーラなんて、ぼくのブログを読んでないのに、更新だけ迫るという悪質さです」

サツ「そうやって、内輪な感じの動機で書いてるから読んでくれる人が増えないんだよ・・・。ま、それは置いておいて今回の内容を始めてよ」

 

東京は大雪

バツ「あれは、2月14日の大雪の日のことです」

サツ「あー、あの日の東京はたいへんだったよねー」

バツ「ぼくは、大雪で電車が動かなくなったら困ると思っていつもよりも早く19時台に事務所を出たんです。で、この日はナギーラが監修している本、『Jazz:The New Chapter』の発売日ということで、御茶ノ水ディスクユニオンに立ち寄って、『Jazz:The New Chapter』を購入することにしたんです。Twitterでのやさぐれた人格と違って、書籍の中でのナギーラは面白いことを書いているし、原雅明さん、吉本秀純さん、若林恵さんから、吉田ヨウヘイさん、江利川王子、きちくまくんというなかなかに激アツな執筆陣だったもので、購入することを決めていたんです

Jazz The New Chapter~ロバート・グラスパーから広がる現代ジャズの地平 (シンコー・ミュージックMOOK)

サツ「雪の日なんだから、買うのは次の日にして早めに帰れば良かったのに」

バツ「そりゃそうなんですけど、買わないとナギーラから脅されますからね」

サツ「で、『Jazz:The New Chapter』を買ってから、電車に乗ったわけだね

バツ「いつもは中央線の快速に乗るんですけど、快速は混んでいたし、ちょうど来ていた各駅停車の三鷹行きの席が空いていたので、『Jazz:The New Chapter』を読みながら、ゆったり帰ろうと思ったんですよ。で、三鷹までは非常に順調に進んだんですけど、その後、快速に乗り換えようと思ったら、全然電車が動かない・・・

http://instagram.com/p/kZYi4Xo7FK/

一向に電車が前に進まないんで、これを読んでます。

サツ「ヤバい匂いがしてきたねー。その感じ」

バツ「そうなんです。三鷹駅に着いたのが20時台だったんですが、そこから、0時すぎまで下りの電車が全く動かない」

バツ「上りの電車は動いていたので上りの最終電車に乗り換えて、深夜も営業している西荻窪のクラッシュビーンにでも行って避難しようかと思っていたところで、「下り電車、動きます」との車内アナウンス。それならと思って、素直に帰ろうと思って、上りの最終に乗らずに下り電車に乗ることを選択したんです」

サツ「それでちゃんと動いたの?」

バツ「車内の電気が着いたり消えたりしながらも、隣の武蔵境までは順調に行ったんです」

サツ「ところが・・・」

バツ「その後、武蔵境駅の外に出て、タクシーを探したり、お店を探してみたりしたんですけど、何もない・・・」

サツ「三鷹ならまだ店があっただろうに」

バツ「そうなんです・・・。twitterを見ると、阿佐ヶ谷rojiでは帰れなくなった人たちが

お店のご厚意で泊まっているという。僕もその中に入りたかったなんて思いながら、電車の中で一人、twitterを見ていたんです。そろそろiPodiPhoneの充電もなくなりそうだし・・・」

サツ「後で聞いたところによれば、そのとき阿佐ヶ谷rojiに泊まっていた中の一人がウチのキノコ*1だったんだよね」

バツ「そうなんです・・・。さらに切なくなりましたね・・・」

サツ「で、結局どうしたの?」

バツ「朝の5時近くなっても武蔵境から全然電車が動かないんです。おかげで、夜中から朝方まで『Jazz:The New Chapter』を熟読しまくりました

『Jazz:The New Chapter』

サツ「やっと、本題に入るのね」

バツ「『Jazz:The New Chapter』なんですけど、ナギーラがずっと前から、ロバート・グラスパーロバート・グラスパーって言っていて、そんなにすごいのかーと思いつつ、なかなか聴く機会がなかったんです

サツ「まー、学生時代に比べると音楽を聴ける時間が激減しているから、どうしてもそういうところはあるよね」

バツ「ところが、去年の終わりくらいでしょうか。阿佐ヶ谷のrojiで飲んでいたら、ceroの髙城さんがものすごくカッコいい音楽を掛けていたんです。なんだこのカンタベリー系のジャズロックみたいな音楽は!と衝撃を受けて、誰なのか聞いてみようとモジモジしていたら、近くに居た別の方が、髙城さんに、アルバムのタイトルを聞いていたんです

サツ「で、髙城さんが答えたアルバムタイトルは?」

バツ「Derrick Hodge(デリック・ホッジ)の『Live Today』!髙城さんが「ロバート・グラスパーのバンドのベーシストだよ~」と言っているのを盗み聞きしながら、あ、ナギーラがいつも言ってるロバート・グラスパー!あのロバート・グラスパー!と内心、恐ろしい衝撃を受けたわけです。おかげで横に居た嫁の話は全く耳に入らず・・・」

サツ「嫁の話を聞かずに、髙城さんの話を盗み聞きって、かなりサイテーだね」

バツ「そんなこんなで、ぼくの中で俄然注目度が増してきたデリック・ホッジとロバート・グラスパーとその周辺!とはいえ、ぼくもいろいろな音楽を聴くので忙しいですからね、学生時代のように片っ端から聴いて行くわけには行かないので、羅針盤が欲しかったんです」

サツ「そんなときに発売されたのが『Jazz:The New Chapter』ということか

バツ「そうなんですよ。で、ぼくもなんだかんだで節操なく音楽を聴いているタイプなんで、ディスクガイドを買っても、それなりに自分が既に持っていたり、聴いたことのある盤が結構入っているんです。でも、『Jazz:The New Chapter』に関しては、全くと言っていいほど、持っていない盤ばかり!『Jazz:NewChapter』は、これまでぼくが買ったディスク・ガイドの中で、最も自分が持っていない盤ばかり紹介されてて、そこが素晴らしいと思いました」

サツ「ディスクガイドって、そこで選盤されたジャンルの音楽に入って行くきっかけであり、羅針盤であるわけだから、未知のものが多いほど、魅力が増すってもんだもんね」

バツ「そうなんですよ。だから、その一点だけとってみても『Jazz:The New Chapter』はいい本だなーって思います。監修者であるナギーラは、殺伐ジャーナルを読んでいないし、THE BUFFETTMENT GROUPの音楽も聴いたことがないので、その点では先見の明はないわけですが、新しいジャズを世間に伝えようという気概は伝ってきますし、まだ評価の定まっていないモノたちをリスナーに提示する姿は尊敬してしまいますね

サツ「殺伐ジャーナル云々のくだりは余計だけど、言いたいことはわかるよ。個人的な意見ではあるけど、編集者とか評論家とかには、まだ世間に全く評価されていないものや、評価が定まっていないものに対して、リスナーに新しい視点を与えて触れる機会を作るということを積極的にやって欲しいと思うんだよな。世間にすでに評価されているものをサラッとまとめるだけだと全く面白くないよね」

バツ「世間にすでに評価されているものでも、それを独自の視点で編集してくれる場合はすごく面白いですけどね」

サツ「で、きみにとっての『Jazz:The New Chapter』のハイライトはどこらへんだったの?

バツ「ぼくとしては、まずは、村井康司さん、原雅明さん、ナギーラの「Talk Session」でしたね。長くソロを取ることが今のジャズでは敬遠されがちであるというのがなるほどなと思いました。あと、新世代のジャズ・ミュージシャンがアフリカン・アメリカンであることの出自を前面に出しているという村井さんの指摘とかは、ぼくが全く知らなかった部分なので、すごく興味深かったですね。あと、原雅明さんの「エクスペリメント成功の鍵を握ったドラムの進化」も楽しかったです。ぼくは、どうしてもリズムの面白さというのをメインに音楽を聴きがちなので、こういった分析は非常に興奮します」

サツ「なるほどねー」

バツ「あと、吉本秀純さんの「ワールド・ジャズの新しい勢力地図」もすごく面白かったです。話の趣旨が少し変わってしまうかもしれないですけど、自分が知っているアーティストや聴いたことのある盤が一番多かったのが、この吉本さんの記事だったというのが個人的に面白かったです」

サツ「あー、そういうメインの英語圏のものを押さえずに、周辺は押さえているという、辺境プログレファンとかにありがちな傾向だよね。ま、英語圏の音楽を先に聴かなきゃいけないなんて決まりは全くないから、個人の自由なわけだけども」

バツ「たしかに、ぼくは、英語圏の音楽よりも、非英語圏の音楽の方をより積極的に聴くという傾向がありますからね。ただ、これは別に斜に構えて王道を聴かないとかそういうのではないんですよ。ぼくの場合は、メインはロックになるんですけど、ロックはやっぱり元々英語圏の音楽だと思うし、英語が一番キレイにハマると思うんですよ。でも、英語圏ではない人たちがロックを誤読したり、自分たちの文化を知らないうちに取り入れたりして、チャンプルーされた音楽というのに、すごく魅力を感じるんです。いろいろな要素が勝手に入り込んでいくことで、元々のロックのフォーマットがどんどん知らない形に変形していって、ときには全く原型をとどめない形になって行く。そんなところに魅力を感じてしまうわけです」

サツ「そういうところで行くと、今回の『Jazz:The New Chapter』で取り上げられている英語圏の音楽というのも、ジャズ以外の要素をどんどんチャンプルーしていったものが多そうだから、きみが好きそうなものもいろいろあるんだろうね

バツ「そういう予感はヒシヒシと感じています。ってなわけで、『Jazz:The New Chapter』を羅針盤に、こちらの方面もいろいろ買って行こうと思っていますよ」

サツ「嫁さんに怒られない程度にしときなね

"Jazz The New Chapter" Release Party

バツ「そんな『Jazz:The New Chapter』なんですが、3月30日に渋谷のBar Musicでリリースイベントがあるそうです

3/30 Sun.

"Jazz The New Chapter" Release Party

[DJ]柳樂 光隆(ジャズ評論家)・原 雅明(音楽評論家)・江利川 侑介(ディスクユニオン)・北澤 敏・吉田ヨウヘイ(音楽家) & Jazz The New Chapter 執筆者

[at]渋谷 Bar Music

[info]03.6416.3307

※19:00~24:00の開催です。

※1Drink Order + Music Charge ¥300

http://barmusic-coffee.blogspot.jp/

サツ「へー。『Jazz:The New Chapter』を読んだ後でイベントに行くとさらに楽しくなりそうだね

話は戻って、東京は大雪

バツ「そんなこんなで『Jazz:The New Chapter』を熟読後、全く電車が動かないので、意を決して、ぼくは武蔵境から歩いて帰ることに。朝方になったので、少しはマシかと思ったら、雪が雨に代わってて、しかも風が強いという最悪の状況に。歩き出して10分後ぐらいには後悔しはじめていました

サツ「タクシーの乗車拒否されたり、メガネが吹き飛んだりって、電車が動くまで、素直に居た方が良かったんじゃない・・・」

バツ「全くもっておっしゃるとおり。とはいえ、元はと言えば、雪の日なんだから、ユニオンに寄って『Jazz:The New Chapter』を買うなんてことをしないで、素直に快速に乗って早く帰っていれば良かったんです!『Jazz:The New Chapter』が即日完売になるわけでもないのに!

サツ「それ、ユニオンに行く前に気づいておこうよ・・・」

バツ「悲しいけど、ホントのこと!」 

*1:THE BUFFETTMENT GROUPのリーダー。1日4個のライブをハシゴするという狂気の沙汰を軽くやってのける人間。最近は地方遠征にも積極的。ライブinハトヤの際にライブ終了と同時にハトヤに到着するという話はもはや伝説となっている。持ちネタはミスタードーナツのドーナツの作り方の話